ツールボックス・マーダー

日本未公開ホラー『The Toolbox Murders (1978)』のリメイクで、監督は『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー、主演は『MAY -メイ-』や『キャリー(TV版)』の特殊女優アンジェラ・ベティス

ハリウッド近郊の古いアパートに引っ越してきた若夫婦ネル(アンジェラ・ベティス)とスティーヴン。そこの住人が次々と何者かに大工道具(かなづち、釘うち銃、丸ノコ、ドリルなど)で殺され姿を消してゆく。ただ一人それを不審に思ったネルはアパートの歴史を調べ、建物が二重構造になっている事に気づく。アパートを探るうち隠し部屋に迷い込んだネルは数十体もの死体を発見、逃げ出そうとするが殺人鬼に見つかってしまう。一方、やっと事件に気づいたスティーヴンや管理人たちもネルを探し始めるのだが・・・。

オリジナル版は観てないんですが、そっちはたぶん大工道具による連続殺人鬼ものだと思います。リメイク版は「今の時代それだけじゃピンとこない」(脚本家談)そうで、それに黒魔術とかで味付けしたそうです。ん〜、それが良かったのかどうかは微妙なところですねー。その黒魔術とか隠し部屋の謎解きがメインになっちゃって、肝心の殺人シーンにあまり力入ってない感じ。今回たまたま道具箱がそこにあったから凶器にしましたみたいな。それに今まで住人を何十人も殺してきたみたいだけど、全員を大工道具で殺したわけじゃないやろと・・・タイトルと内容が合ってないがなと。

あと、ちょっとした事なんですが、このアパートの管理人の部屋がブラック・ダリア事件のエリザベス・ショートがかつて住んでいた部屋だと言うセリフがあるのに、字幕では「リズ・ショートが住んでたんだ」「女優の」で済まされちゃってます。映画好きのラスマンという男がハリウッド・スター達の隠れ家として建てたこのアパート。現在でもその住人にはスターやモデルを夢見てハリウッドにやってきた者が多い。しかし、そのほとんどが夢破れ故郷に戻ってゆく。だから住人が急に姿を消してもみんなあまり気にしない・・・という事を象徴するセリフなんですが。まぁこんな細かい事どーでもええから訳さんとこ・・・と思うか、マニア向けの小ネタやな、面白そうやし訳しとこか・・・と思うかの違いです。ま、訳者がもともと訳さなかったのか、訳したけど誰か(偉いさん)に却下されたのか分かりませんが、どちらにしても映画に対する愛が無いですね。

悪魔のいけにえ』に影響されてできた『The Toolbox Murders』のリメイクをトビー・フーパーが監督する。妙なめぐり合わせです。『マーダー・ライド・ショー』のシェリ・ムーン(ロブ・ゾンビの奥さん)も出てますが、その『マーダー・ライド・ショー』もロブ・ゾンビ流『悪魔のいけにえ』でしたよねぇ。当初は『MAY -メイ-』の監督ラッキー・マッキーが殺人鬼を演じる予定だったそうで、そう考えてみるとこれはトビー・フーパーと新進のホラー監督たちとのリンクとなる記念碑的作品かもですよ!(←大袈裟)

原題: Toolbox Murders (2003)


切断―ブラック・ダリア殺人事件の真実

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